Leader's Voice
アライアンスの達人
コロナ禍や不確実な国際情勢を受け、国内企業の多くが会社のあり方を見直すなか、自社だけでなくパートナーのリソースも活用してより強固で柔軟な体制づくりを加速しようとする企業が増えています。活性化するBPO市場において、中期経営計画で「NEW BPO」を掲げ事業の多角化を進めるベルシステム24では、資本提携や業務提携などアライアンスを積極的に進めています。その狙いやここまでの成果、今後のビジョンについて聞きました。
商社、国内/海外のシステムインテグレーター、官公庁、ファンド運営・事業投資などの職歴を経て、2018年にベルシステム24海外事業部長に就任。ベトナムの事業基盤、タイ最大の財閥であるCPグループと共同で当社2ヵ国目となるタイへの進出を牽引した後、第2事業本部の副本部長を経て2024年に事業開発本部長に就任。
2007年にベルシステム24にコミュニケーターとして入社、大手通信会社のテクニカルサポート業務に従事した後、2012年より事業企画、オペレーションセンター長、営業部長などを歴任。2023年より国内事業開発部長(現職)に就任し、おもにパートナーとのアライアンスの構築や新規事業の戦略策定・実践を牽引。
2001年にベルシステム24にコミュニケーターとして入社、北海道支店で地場金融機関やエネルギー企業等の営業やオペレーション業務を経験した後、2013年に首都圏に異動し大手EC事業者の営業を担当し取引拡大を牽引。2016年、新設の海外事業部に公募で異動し3年間ベトナム(現在のBellsystem24 Vietnam)での事業立上を推進した後、2023年より海外事業開発部長に就任。
当社はコンタクトセンター業務を通じて、長年、運用の標準化やVoC(Voice of Customer)の知見を蓄積してきましたが、世の中では生成AIなど先端技術を駆使した様々な領域で変革を仕掛けるベンチャーが増えてきました。総合BPOパートナーを目指す当社としては、お客様の変革ニーズを満たしていくうえで、こうした新しいアイデアを活用しない手はなく、ベンチャーとのアライアンスのメリットが大きく顕在化してきたという外的要因があります。一方、内的要因としては3つほど挙げられます。まず1つ目、当社のステークホルダーでもあり、先んじてアライアンスを進めてきた、伊藤忠グループおよびTOPPANグループからの紹介案件です。出資や協業などアライアンスの相談や紹介など多数の案件が寄せられるのに加え、現場からも、顧客から相談を受けたアライアンス案件が毎日のように上がってくるようになりました。2つ目は、事業開発のスピードです。新しい技術や独自のアイデアでこれまでなかったものを生み出すベンチャーのアプローチと、当社が持つ運用ノウハウを組み合わせることで、変革を加速することができます。3つ目は、社員の成長に向けた機会の創出です。 当社の業務はクライアント企業のフロント業務(顧客対応)が中心ですが、資本提携に至るケースでは人材を拠出しており、その人材が事業戦略を企画・実行することで、経営に近い上流業務にハンズオンすることで、成長につなげます。
アライアンスについては"お互いが納得できる攻めのアクションに落とし込めるか"を重視してアプローチを変えています。重点施策が一致したところとは深く組み、一致しなかったところとは、まずは協業から始めてお互いに見極めるといった準備運動から入ります。前回の中期計画の一つの柱として「信頼と共創のパートナー成長」を掲げたことで、この4~5年で"変革なくして成長なし"というマインドセットが社員の間で広く浸透し、積極的なアライアンスを通じて新たな事業を創出することをよしとする企業文化が定着してきました。また、当社ではベンチャーに対する経営効率化を含めた支援も行っており、こうした包括的なサポートも含め、ベンチャーから見ても魅力のあるアライアンスに映っていると考えています。
株式会社ベルシステム24 事業開発本部長 杉原 裕介
アライアンスによる国内外での複数の新規事業がすでに始動しています。国内では、ステークホルダーである伊藤忠グループとの資本提携による「CTCファーストコンタクト株式会社(以下CTCFC)」、同じくTOPPANグループとの資本提携による「TBネクストコミュニケーションズ(TBNC)」のほか、一次産業の2社との業務・資本提携や、自治体向けにサービスを提供する企業との業務提携で住民サービスの質や効率向上を進めるなど、当社がこれまでリーチできていなかった業種・業界とのアライアンスによる多角化にも注力しています。また海外でも、ベトナム、タイ、台湾での事業化を進めており、現地市場でのBPO事業や国内からのオフショア事業を展開しています。国内・海外を合わせたアライアンスを通じて創出された売上は、ベルシステム24グループの売上の2割弱を占めるまでに成長しました。これまで当社が中心になってアライアンスを進めてきましたが、今後はこれらの事業会社がフロントに立ってアライアンスを進めていくことも想定しています。本来、事業開発の機能・役割というのは、特定部門だけが持つのではなく、全社・全員で担うべきだと思いますが、いざ業務提携・資本提携となると、財務・法制度対応などプロフェッショナルな領域での支援が必要になってきます。アライアンスによる事業開発を加速していくためにも、そうした支援を強化していきたいと思います。
株式会社ベルシステム24 国内事業開発部長 宮本 友樹
これまでなかった領域でのアライアンスということで、2つほど紹介させてください。1つ目は一次産業の領域で、養豚農家支援のSaaSを提供する企業とのアライアンスです。こちらはSaaS×BPOの組み合わせで何か社会貢献できるサービスモデルが作れないかという視点で協議を進め、2023年6月に資本業務提携に至りました。具体的には、SaaSアプリへのデータ入力や、夜間も含めた24時間✕365日の見守りなどの業務を代行することで養豚農家の負荷を軽減します。2つ目は、データマーケティングの業務設計や基盤構築に強みを持つ企業の子会社化です。当社はコンタクトセンターでの顧客接点を活かしたCX事業領域拡大に向け、上流工程を担える企業との協業を模索しており、双方にとってメリットのある座組を協議した結果、2023年7月に子会社化が実現、さっそく既存顧客とのプロジェクトが動き出すなど好調な滑り出しを見せています。
シンカーとのWin-Winのアライアンス
なんと言っても「実現スピード」と「視点の多様性」が魅力です。業界のプロフェッショナルとつながることで、お互い足りない機能を補完し合ってスピーディにジョイントベンチャーを実現できます。あとは「組織活性化」の効果も魅力です。国内事業開発部が主管となって「BXアカデミー」を社内で立ち上げ、これまで面談してきた約160社のパートナー候補のなかからピックアップして、どのような事業化が可能か"妄想して"アウトプットしていますが、思考鍛錬の場として大変効果的です。社会貢献をテーマにCRM隣接領域のBPO開拓を進めている点は、「イノベーションとコミュニケーションで社会の豊かさを支える」という当社のパーパスとも合致しており、IR面を含め協業に良い影響をもたらしているものと考えています。
株式会社ベルシステム24 海外事業開発部長 岡崎 朋則
伊藤忠グループの出資を受け入れてから、(1)海外のコンタクトセンター市場の開拓、(2)現地パートナー企業との協業を通じたBPO市場の開拓、(3)国内企業のオフショアニーズへの対応、の3本柱を基本戦略として、海外での事業開発に取り組んできました。現在、ベトナム、タイ、台湾の3カ国でアライアンスによる事業化が実現しています。ベトナムの場合は、現地のリーディングカンパニー(個人株主)との協業からはじめ、2017年にマイノリティ出資に至りました。その後、着実に成長戦略を推し進めた結果、2023年にベルシステム24グループが80%/TOPPANが20%出資する形で日系子会社化を果たしました。まさに、一歩一歩段階を踏んでアライアンスレベルを高めていく、M&Aのロールモデルと言えます。現在の規模は約3,200名で、急成長のベトナム市場に進出する日本・海外企業や現地企業を顧客に、2017年当初と比較して事業規模が約3倍にまで成長しています。一方、伊藤忠グループと現地No.1キャリアの太いパイプを活かして、その子会社に49.99%出資する形で一気に進出したのがタイです。ベルシステム24の運用ノウハウ(特に管理系のナレッジ)を注入した効果もあり、こちら会社も事業規模が約3倍に拡大しています。台湾の場合、コンタクトセンター自体は、現地No.1キャリアの子会社との提携によるスクラッチ進出で、そこを足がかりに生成AIを中心とするテック領域で組んだ"合わせ技"のアライアンスモデルになります。伊藤忠グループが出資する現地のAI先端企業と出会い、コンタクトセンターのオペレーションにAI(生成AI)を組み込んだ次世代CRM「CRM Next」を共同でリリースしました。2023年12月にはこの会社とも業務提携し、"AI✕BPO"というテーマで内製のコンタクトセンターや周辺領域をメインに市場開拓を進めています。まさにテック大国の台湾ならではのアライアンスモデルで、AIという武器を得て市場競争力を強化することができました。
それぞれ異なるモデルで海外に進出
営業連携/ナレッジ連携/人材連携(交流)の3つのシナジー(連携)を意識して取り組んでいます。営業連携による売上拡大は当然として、当社が国内事業で蓄積してきたメソッドを適切にローカライズしながら現地に展開し市場での競争力を強化しています。人材連携については"海外人材開発"をテーマに、3カ国のスタッフと英語で定期的に事例共有会を開催したり、現地スタッフの日本へのインターンシップ施策や当社若手スタッフの海外トレーニー施策(現地駐在)を展開するなど、中長期で取り組んでいます。これからますます不確実になっていく世界を考えると"両利きの経営"が重要で、国内の既存事業の変革だけでなく、新しい市場の探索も同時進行していく必要があります。柔軟性や忍耐力をもって、現在展開する3カ国を足がかりに他市場も拡大していければと思います。
事業本部長の杉原は、かつて担当していた部門で掲げていた「Innovation is Collaboration」というスローガンを、今でも信じているという。"改革や変革は共同作業とパートナーシップから生まれる"という考え方は、中期経営計画で掲げる「NEW BPO」に向けた重点施策のひとつ"Engage(つなげる)"や、経営理念のひとつである"独創性(現場力と進化するテクノロジーの融合でほかにない価値をつくる)"にも通ずる。
社員一人ひとりが「その声に、どうこたえるか。」を胸に、課題に挑むプロジェクトストーリー
人事・経理業務での人材流動化を実現し、日本企業の競争力向上に貢献するために立ち上がった「HorizonOne」
畜産業界のDX化と生産性向上に向けたエコポークとの協業プロジェクトが畜産の未来をささえる
究極の顧客体験を創るデータマーケティング事業を目指し、ベルシステム24×シンカーの提携が実現
2014年に伊藤忠グループ入りして以降、総合商社のグローバルネットワークを駆使した現地有力企業とのアライアンスなどにより、海外進出を加速するベルシステム24。現在(2024年末時点)、ベトナム、タイ、台湾の3か国で事業会社を運営しており、各国の状況に合わせたアライアンスで成長戦略を進めています。今回は3社の若きリーダー達に、それぞれの市場環境や提供価値について聞きました。
2005年の上場廃止後、米国投資会社傘下での事業運営を経て、2014年、伊藤忠商事株式会社を株主に迎え入れ、翌年、東証一部再上場を果たしたベルシステム24。さらに、2017年にはTOPPAN株式会社の資本参加を受け、国内大手企業2社の下で成長戦略を実践してきました。グループに多くの事業体を抱える巨大企業2社の傘下に入ることの意味や、これまでのシナジー効果や事例などについて、伊藤忠グループ/TOPPANグループとベルシステム24グループ、それぞれの立場で語っていただきました。
対応する人によらない再現性を担保する……コンタクトセンター運営のリーディングカンパニーとして長年磨き上げてきたのが業務の「型化」です。ベルシステム24のDNAとも言える型化のメソッドは、それ自体が価値となる大きな可能性を秘めていました。型化メソッドをどうサービスへと展開し、価値につなげるのか、先頭に立って取り組みを進める2人のインタビューをお届けします。
AIが登場して以降、淘汰される業種のひとつとされてきたコンタクトセンターだが、生成AI元年と言われる2023年を迎えた今、市場規模に大きな変化は見られない。一方で、生成AIの主要ベンダーは、学習データとしてコンタクトセンターに蓄積される膨大な対話データ(VoC)に注目しており、コンタクトセンターがキープレイヤーとなる可能性も出てきた。生成AIを脅威と見做すか、イノベーションをもたらす強力な武器と考えるか、ベルシステム24の答えとは?
コンタクトセンター受託を主力とし、グローバルで4万人超の従業員を抱えるベルシステム24。データドリブンでセンター業務を変革し総合BPOパートナーを目指す同社の取り組みについて、現状や見えてきた未来、顧客に提供し得る新しい価値など、DXを牽引する3人が語ります。
社会の急速な変化を受け、日々変わっていくクライアントのニーズにどう対応するか ――― ベルシステム24が出した答えは、営業とオペレーションが分離していた“製販分離組織”を“製販一体組織”に変え、各クライアントの責任者を「アカウントオーナー」とする制度でした。アカウントオーナーが目指す理想とあわせ、実際のクライアントとの関わり方、さらに制度にあわせた人材育成まで詳しく聞きました。
定型業務でも属人化が進み、業務改革や人材の流動化が進まない傾向にある経理・人事領域。コンタクトセンター以外の事業で多角化を図るベルシステム24は、経理・人事領域を得意とする株式会社レイヤーズ・コンサルティング(以下、レイヤーズ)と資本提携。2022年3月にHorizon Oneを設立し、経理・人事BPO市場に参入しました。Horizon One設立の経緯や目的、ここまでの取り組みの成果や今後のビジョンなどについて聞きました。
これまでのカスタマーサポート型コンタクトセンター市場の成熟化を背景に、VOCセントリックのデータマーケティング事業で、コンタクトセンターからマーケティングセンターへの進化を遂げるベルシステム24。既に専門企業がひしめく市場で勝算はあるのか?"蕎麦屋のカレー"が意図するデータマーケティングの形とは?
2023年9月に養豚経営支援システム「Porker」を手がける株式会社Eco-Porkと資本業務提携、さらに2024年4月にはNTTテクノクロス株式会社との共同サービスとして牛の起立困難予防声かけAIサービス「BUJIDAS(ブジダス)」を提供開始し、一次産業への取り組みを推進するベルシステム24。既存のBPO業務で培ったノウハウは業界が抱える課題を解決へと導く起爆剤になる……その背景にある熱い想いについてプロジェクトを率いる2名に話を聞きました。