Leader's Voice
ゲームチェンジャー
コンタクトセンター受託を主力とし、グローバルで4万人超の従業員を抱えるベルシステム24。データドリブンでセンター業務を変革し総合BPOパートナーを目指す同社の取り組みについて、現状や見えてきた未来、顧客に提供し得る新しい価値など、DXを牽引する3人が語ります。
1997年入社。ソフトバンクとの合弁会社であるBBコールへの出向(2012年3月、同代表取締役社長)を経て、2014年4月より常務執行役員COOとしてオペレーション部門を率いる。2016年5月、専務執行役員就任後は事業本部を管掌、様々なデジタル戦略プロジェクトのオーナーとしてDX化を推進。現在はグループ会社であるHorizon Oneの取締役を兼任するとともに、日本コールセンター協会長として業界の発展にも貢献。
2005年入社。大手通信会社から受託するコンタクトセンター管理者として従事、2008年より事業管理部門で業績管理・分析を担当する一方、事業計画や管理会計の基盤構築に携わる。2019年より経営企画・CFO付(2020年3月、同副部長)としてIRや株主総会運用、中期経営計画の策定をリードし、2023年よりサービス開発やBPOオペレーションの高度化を担う業務統括部門の責任者。
2002年入社。一貫してコンタクトセンター事業に従事し、2017年よりセールス&オペレーション組織長としてBPO事業をリードする傍ら、新規事業開発としてスタートアップへの出資や資本業務提携にも関与。2020年Sony CSLとの共同R&D(イノベーション&コミュニケーション サイエンス研究所)を経て、現在はコンタクトセンターのDXを推進するDCXセールス部門の責任者。
まず外部要因としては、この10年くらいで、コンタクトセンター業務のなかで蓄積される様々な情報・データを、属人的な作業を介することなく活用できる、新たな技術や仕組みが整ったことが大きいと思います。その結果コンタクトセンターの現場では、記録・登録など後工程の作業がなくなり生産性が劇的に向上する、属人化によるバイアスを解消して対応スキルが平準化する、業務負担が減り働きやすくなったことで採用しやすくなり早期退職が減るなどの好影響が見られます。生産性の向上は同じ時間での対応可能件数増につながり、コスト最適化という形でクライアントにも大きなメリットをもたらします。このほかクライアントのメリットとして、対応品質のレベルアップにより解決率が向上する、リアルタイムでデータ活用できるようになるなども見逃せません。内部要因としては、かつて外資系ファンドの傘下に入った際、すべてデータで可視化するグローバルスタンダードのコンタクトセンター運用を戦略的に実践したこと、さらに、エンドユーザーと直接対峙する従業員の多くがVOC活用の必要性や重要性を理解している、CRMビジネスならではの下地もあったと思います。
データドリブン推進のエンジンとなる3つの組織を設けました。1つ目は、国内約3万人、グローバルで4万人を超える従業員の中からデジタル人材を発掘して作った「デジタルDX戦略部」です。社内公募で手を挙げた100人超から20数名を厳選して、異動をともなわず本業に従事したまま兼業するバーチャル組織として2024年1月に発足しました。2つ目は、コンタクトセンターの基盤システムであるクラウド型PBX、音声認識システムやCRMシステム、ボイス・チャットボット等のコンタクトセンター向け製品のほか、データ分析やコンサルティングなどのサービスを外販する「デジタルCX本部」です。先端ソリューションを幅広く取り扱うため、各分野において専門知識を有する社外のプロフェッショナル人材を積極採用し、現時点での規模は約90名となっています。最後3つ目が「データマーケティング事業部」で、ベンチャー企業と戦略的提携のうえデジタルマーケティングに取り組んでいます。
株式会社ベルシステム24 専務執行役員 第1管掌/業務統括管掌/HR管掌 呉 岳彦
一定の成果が見えてきた取り組み事例として2つほど紹介させてください。1つは5年ほど前にスタートし、2024年3月から全社組織に昇格したAdvanced Operation Lab.です。少数精鋭16名のメンバーが、北海道の拠点からリモートで全国各地の主要なオペレーションチームと連携し、新しいテクノロジーや統計分析を駆使したオペレーション業務改善を支援しています。もう1つが、DUMSCOというベンチャーとの協業で開発・導入した「採用マッチングAI」です。コンタクトセンターはもともと労働力の流動性が高い業種ということもあり、ベルシステム24でも毎年7,000~8,000人を採用しています。募集~採用面接~オペレーション現場が面談~クライアントと検討して採用~現場でOJTといった一連のプロセスには膨大な工数とコストがかかりますが、離職率が高く常に募集し続けなければならない状況でした。そこで、優秀な人材かどうかではなく、コンタクトセンター業務に合っているか(言い換えれば、長く働いてくれそうか)どうかを判定するマッチングシステムを開発しました。過去10万人くらいのデータをAIで分析し、コンタクトセンターを6つに分類したうえで、マッチングAIによる選考採用を進めた結果、半年後に残っているケースが大幅に増えました。マッチングAI導入と併せ、必要性が低下した面談や現場での研修を廃止した結果、十億単位のコスト削減を実現しました。
コンタクトセンター業務に最もインパクトがあるのは、要約の自動作成です。会話内容をキーボード入力する従来の後工程が不要になり、現場の生産性が飛躍的に向上します。生成AIの登場によって複雑なツールの操作が不要になり、人材要件がよりコミュニケーションに長けた人にシフトする可能性があります。シニア人材の採用が増えて、コンタクトセンターの風景が今とは随分変わってくるかもしれないですね。
顧客ニーズも高度化し、単に顧客のデータ活用を支援するだけでなく、データを活用したマーケティング施策で売上拡大につなげるなど、より直接的な成果を求めるようになってくると思います。蓄積したデータドリブンのノウハウをもとに、徹底的に可視化して合理的に運用する手法をBPOサービスとして展開し、顧客のDXを支援していく計画です。
株式会社ベルシステム24 業務統括本部 業務統括部長 水谷 源成
目的は、定量・定性に関わらずすべてにおいてデータ活用を積極的に進め、データに基づいた根拠と再現性のあるセンター運用を実現することです。そのために、下記5つのチームが連携して機能する体制を構築し、独自のBIツールにより改善活動に対する定量的な変化を短期間で確認し、より迅速で確実なPDCAを実践しています。
Advanced Operation Lab.の5つのチームと機能
国内にあるアドビ株式会社のコンタクトセンターでAdvanced Operation Lab.を導入したところ、リテンション率(顧客維持率)が、同社が世界中で運営するコンタクトセンターの中でNo.1になりました。国内で他社に先駆けWMFを導入したベルシステム24のノウハウが世界に認められた事例と言えます。今後はほかのジョブへの導入を進めることでコンタクトセンター高度化を加速しつつ、他社に先駆けグローバルスタンダードを採用したベルシステム24ならではのソリューションサービスとして外販することも考えたいと思います。
株式会社ベルシステム24 DCXセールス部長 兼 デジタル人材戦略部 野瀬 裕
ベルシステム24の事業ドメインがコンタクトセンター受託であることは広く認知されていますが、それ以外に、CRM領域の様々なソリューション・製品、SI、コンサルティングなど多彩なサービスを提供していることは、あまり知られていません。デジタルCX本部の重要な役割として、こうしたコンタクトセンター受託以外のビジネスを、事業の柱として育てることがあります。たとえば最近では、AIを活用して自動化したい・効率化したいというお客様が多い一方で、AIを使ったツールやサービスが乱立していて、どれが自社に最適なのか分からない...という声をよく聞きます。お客様に最適なツールを提案し、導入したツールを現場にフィットさせていく...といった導入支援サービスのニーズが高まっており、こうしたニーズに応えるのもひとつです。
デジタルCX本部が提供するソリューションの全体イメージ
デジタルCX本部の専門性がお客様の多様な課題やニーズとマッチしない場合、前述の社内公募人材で運営するデジタル人材戦略部でカバーすることもあります。デジタル人材戦略部には、データ分析、Web制作、Google アナリティクス、音声認識など、様々な得意領域を持つ人材が集まっていますが、個人的に興味があり独学で取り組んでいる、過去に勤めていた会社で業務経験がある...といった方がほとんどです。プロフェッショナルとして実際の業務で活躍するにはリスキリングが必要で、副業でWebサイト制作をやっていたある社員には、自動応答サービスの開発チームでUI開発に参加してもらうなど、適した社内業務をアサインしてOJTで育成しています。既に、データアナリストなどのスペシャリストは市場価値が高く、外部からのキャリア採用が今後ますます難しくなることが予想されるため、引き続きデジタル人材戦略部では社内のリソースを発掘・育成して、コア人材を確保していきたいと考えています。
3つの組織が支援する形で現場からデータドリブンを推し進めるベルシステム24。Advanced Operation Lab.によるセンター業務の高度化や、採用マッチングAIによる離職率低減など、すでに目に見える成果を上げているが、変革の取り組みはまだはじまったばかりだ。引き続きグローバル4万人超にデータカルチャーを浸透させ、顧客のDXニーズに応える総合BPOパートナーを目指していく。
社員一人ひとりが「その声に、どうこたえるか。」を胸に、課題に挑むプロジェクトストーリー
ChatGPTなどの先進技術を積極的に活用し、生産性と人の働き方の本質的な変革が始まる
データを駆使したコンタクトセンター運営の核となる専門集団「Advanced Operation Lab.プロジェクト」
コロナ禍や不確実な国際情勢を受け、国内企業の多くが会社のあり方を見直すなか、自社だけでなくパートナーのリソースも活用してより強固で柔軟な体制づくりを加速しようとする企業が増えています。活性化するBPO市場において、中期経営計画で「NEW BPO」を掲げ事業の多角化を進めるベルシステム24では、資本提携や業務提携などアライアンスを積極的に進めています。その狙いやここまでの成果、今後のビジョンについて聞きました。
対応する人によらない再現性を担保する……コンタクトセンター運営のリーディングカンパニーとして長年磨き上げてきたのが業務の「型化」です。ベルシステム24のDNAとも言える型化のメソッドは、それ自体が価値となる大きな可能性を秘めていました。型化メソッドをどうサービスへと展開し、価値につなげるのか、先頭に立って取り組みを進める2人のインタビューをお届けします。
AIが登場して以降、淘汰される業種のひとつとされてきたコンタクトセンターだが、生成AI元年と言われる2023年を迎えた今、市場規模に大きな変化は見られない。一方で、生成AIの主要ベンダーは、学習データとしてコンタクトセンターに蓄積される膨大な対話データ(VoC)に注目しており、コンタクトセンターがキープレイヤーとなる可能性も出てきた。生成AIを脅威と見做すか、イノベーションをもたらす強力な武器と考えるか、ベルシステム24の答えとは?
社会の急速な変化を受け、日々変わっていくクライアントのニーズにどう対応するか ――― ベルシステム24が出した答えは、営業とオペレーションが分離していた“製販分離組織”を“製販一体組織”に変え、各クライアントの責任者を「アカウントオーナー」とする制度でした。アカウントオーナーが目指す理想とあわせ、実際のクライアントとの関わり方、さらに制度にあわせた人材育成まで詳しく聞きました。
定型業務でも属人化が進み、業務改革や人材の流動化が進まない傾向にある経理・人事領域。コンタクトセンター以外の事業で多角化を図るベルシステム24は、経理・人事領域を得意とする株式会社レイヤーズ・コンサルティング(以下、レイヤーズ)と資本提携。2022年3月にHorizon Oneを設立し、経理・人事BPO市場に参入しました。Horizon One設立の経緯や目的、ここまでの取り組みの成果や今後のビジョンなどについて聞きました。
これまでのカスタマーサポート型コンタクトセンター市場の成熟化を背景に、VOCセントリックのデータマーケティング事業で、コンタクトセンターからマーケティングセンターへの進化を遂げるベルシステム24。既に専門企業がひしめく市場で勝算はあるのか?"蕎麦屋のカレー"が意図するデータマーケティングの形とは?
2023年9月に養豚経営支援システム「Porker」を手がける株式会社Eco-Porkと資本業務提携、さらに2024年4月にはNTTテクノクロス株式会社との共同サービスとして牛の起立困難予防声かけAIサービス「BUJIDAS(ブジダス)」を提供開始し、一次産業への取り組みを推進するベルシステム24。既存のBPO業務で培ったノウハウは業界が抱える課題を解決へと導く起爆剤になる……その背景にある熱い想いについてプロジェクトを率いる2名に話を聞きました。
“デジタル田園都市国家構想”の実現に向けて年間1,000億円規模の交付金が予算化され、全国の自治体でDXの取り組みが一斉に進むなか、自治体向けシステムで実績豊富な株式会社Blueship(以下Blueship)とタッグを組み、自治体BPO事業の拡大を目指すベルシステム24。民間にはない公共ならではの要件や、対応するうえでの工夫や苦労、社内で「藤沢モデル」と呼ぶ成功事例の詳細などについて聞きました。