Leader's Voice
「その声」にこたえる共創
“デジタル田園都市国家構想”の実現に向けて年間1,000億円規模の交付金が予算化され、全国の自治体でDXの取り組みが一斉に進むなか、自治体向けシステムで実績豊富な株式会社Blueship(以下Blueship)とタッグを組み、自治体BPO事業の拡大を目指すベルシステム24。民間にはない公共ならではの要件や、対応するうえでの工夫や苦労、社内で「藤沢モデル」と呼ぶ成功事例の詳細などについて聞きました。
2001年入社。民間企業、各省庁/地方自治体等幅広く担当し、自治体プロジェクトをリード。営業/オペレーション両部門をマネジメントし、最先端コンタクトセンターサービスを提供。自治体領域では住民と行政を繋ぐサービスの一環として藤沢市のDX推進に貢献し、市民タッチポイントを強化した総合コンタクトセンターを立ち上げ。また、島根県や松江市との包括業務協定及びBlueshipとの業務提携を推進し、各プロジェクトを成功に導く。2024年第4事業本部副本部長に就任。
2019年入社。TOPPANとの合弁会社であるTBネクストコミュニケーションズへの出向を経て、2023年より自治体向け営業を担当。自治体領域の拡大を目指し、ベンチャー企業との協業を含めた様々な活動を推進。現在は、Blueshipが提供するITシステムと当社の運用ノウハウを活用し、自治体のDX推進を実施。
2015年入社。400席超のマイナンバー関連業務の責任者を経て、2018年10月よりヘッドクォーターとして募集型企画旅行、フリマアプリ等の業務を担当。2020年12月より自治体プロジェクトに参画し、200席のマイナンバー業務責任者として従事。2023年3月自治体総合コンタクトセンターのアカウントオーナーを担当。市民/市職員目線の業務設計/構築、データ可視化/分析による品質高度化や職員工数軽減を実現。現在コンタクトセンターの強みを活かした自治体DX推進を担当。
自治体で民間委託が可能になって以降、民間向けコンタクトセンタービジネスの知見を活かし、自治体で実績を積んできました。その後2020年前後から、国主導でマイナンバーをフックとした自治体DXが動き始め、"デジタル田園都市国家構想"の実現に向けて年間1000億円規模の交付金が予算化されたことを受け、民間で磨いてきた知見を活かし、改めて公共領域のBPOを深耕していくことにしました。当然この市場を狙っている競合は多く、人材派遣大手や地場の中小SIerが入り乱れ価格競争が激化しています。厳しい市場で差異化を図るうえで、1つ可能性を見い出しているのが藤沢市の事例(以下、藤沢モデル)です。単なるコンタクトセンターBPOの提案ではなく、まずはコンタクトセンターを軸に住民との接点を整理したうえで情報を集約(システム化)。縦割りでバラバラの業務をワークフローで回すという将来を見据えた先進的な提案で、その第一歩として総合コンタクトセンターを導入しました。社内的には、当社が強化してきたアライアンス戦略が効果を発揮しています。まずステークホルダーであるTOPPAN株式会社(以下、TOPPAN)のネットワークが加わったことで、営業の可能性が拡がりました。もう1つが、自治体向けに幅広い支援サービスを展開するBlueshipとの協業です。自治体DXではデジタル化による業務効率化が必須となりますが、BlueshipがServiceNow(グローバルで利用されているワークフロー管理システム)で仕組みを構築し、オペレーションを我々が担うスキームで営業を進めています。
当初受託したのが代表電話の代表電話取次業務や個人住民税や国民健康保険料の未納に対する催告業務です。その後、コンタクトセンターに近い窓口業務やその裏の事務系業務などを取り込んでいきましたが、その過程で吸収・蓄積できた、国民健康保険や年金など民間では得られない自治体業務に関する知見は、軽自動車等の登録・廃車手続き対応など、大手派遣会社とバッティングしない業務に領域を拡げていくうえで貴重な資産となりました。窓口業務や事務系業務は杉並区や中野区などで実績を積んでおり、杉並区では国保年金課に当社スタッフが100名規模で勤務し、かつて職員が担っていた業務の7割程度をアウトソースで賄っています。その後、コロナ禍の収束段階でマイナンバーと連動するデジタル田園都市国家構想が動きはじめ、自治体DXに向けた現在のBPOに至りますが、我々は、各自治体でDXの絵を描くデジタル専任官への営業を展開し、府中市などで実績を作ることに成功しました。ベルシステム24の強みは現場目線での運用構築力だと思います。デジタル専任官の構想をもとにSIerが設計したシステムは実態に合わないケースも多くあります。実際、現場と上層部の間で板挟みになりがちな課長クラスから、実務を熟知する我々へのサポートニーズを強く感じています。
株式会社ベルシステム24 第4事業本部 副本部長 吉田 豊
狙いは、自治体BPOの提案で欠かせないデジタル領域を強化することにあります。相互補完でそれぞれの得意分野を活かし提案力を強化できるパートナーを開拓しようと50社近くをネットワークするなかで紹介されたのがBlueshipでした。良い意味でSIerらしくないというか、ボトム(現場)をしっかり見てServiceNowの機能で自治体の課題を解決していくアプローチはベルシステム24のカルチャーに近く相性が良いのではと思いました。実際にBlueshipと連携する形で、世田谷区の出産・子育て応援事業業務委託を皮切りに、東京都庁や藤沢市などで実績を積み上げてきています。対応キャパシティも考えて、それぞれ接点のある自治体リストについて両社で協議し、勝ち筋を厳選して共同で営業を仕掛けており、相互に補完しあう理想的なジョイントベンチャーになっています。Blueshipとの協業ではサービス開発にも取り組んでいます。まずは、ServiceNow を導入して来庁せずにオンラインで完結できるシームレスな住民サービスを実現したうえで、次のステージでは、裏側の業務をワークフローでデジタル化し、職員の工数を大きく削減することを目指しています。一連の過程では必ず業務プロセスの再編・変更を伴うことになり、当社が長年蓄積してきたBPR(業務再構築)の知見が活かせると考えています。さらにServiceNowに組み込むワークフローの設計まで当社で担えるよう、スキル習得や専門人材の育成を急いでいるところです。
株式会社ベルシステム24 第4事業本部 営業企画部 担当マネージャー 森保 彩恵子
自治体の業務委託に関しては、予算とスケジュールがほぼ決まっており、4~7月に来年度予算に向けた計画がはじまり、10月前後に財務関連の交渉を経て年末に来期予算が決まるという基本サイクルに、補正予算が入るイメージです。営業活動においては4~8月が重要なタイミングで、実績をもとに取り組み内容や工数削減など効果をまとめ提案を進めます。直近の営業活動で注力しているのが、Blueshipのシステムと当社の運用を組み合わせた"藤沢モデル"の提案です。費用や機能を、国の指針に沿って各自治体が作成するDX計画に合わせアジャストして横展開を進めています。Blueshipとの協業については、それぞれ営業活動を進めた上で、当社の案件でシステムのデモが必要になったり、逆にBlueship案件で運用支援について案内が必要になった段階で、2社で訪問するといった連携をとっています。考え方や進め方などが一致していてパートナーとして非常にやりやすいと感じています。これまで、システムをA社に、運用をB社に、とバラバラに発注を出すケースが多かったのですが、コロナ禍以降、すべての工程を包括発注するケースが増えました。そうしたなかで、Blueshipが得意とし、高い可用性で自治体の圧倒的支持を得ているServiceNowと当社の高い運用品質を組み合わせた提案は、一括委託を目指す自治体にとって非常に魅力的な選択肢となっています。
ベルシステム24×Blueship 5つの差別化ポイント
世田谷区では定額減税にともなう調整給付金業務を受託しています。この事例で特筆すべきは申請時間を大幅に短縮していることです。ServiceNowのデータ連携により、申請欄に名前や住所など基本情報をあらかじめ表示させることで、30秒程度で申請できるようになりました。さらにBlueshipが審査を自動化するシステムを構築し、申請から6日ほどでスピード給付することで、総務省からファストパス事例として取り上げられています。このケースでは、紙での申請についても、電子申請のプラス2日で給付できるようオペレーション体制を調整しています。競合他社にはできない線をギリギリ追求して魅力付けした形です。
株式会社ベルシステム24 第4事業本部 第3事業部 第4G 片平 洋一
自治体のコンタクトセンターでは、丁寧に誤りなく対応することが重視されます。特に国民健康保険の窓口業務などで金額を間違えたり、保険証を間違えて渡したりといったミスは、トラブルに直結するので、複数人でダブルチェックするなど工数をかけてでも慎重に進めています。一方で、職員の負担軽減も求められており、定型業務にRPAを導入して自動化するなど業務効率向上にも取り組んでいます。たとえば藤沢市役所のコンタクトセンターでは、市民からの幅広い問合せに対し、電話・メールに関わらずコンタクトセンターでワンストップ対応を行うことにより、職員への取次・エスカレーション件数を減少させることで、職員の負担軽減に繋げています。実現にあたり、現場の当社スタッフや自治体職員がより使いやすくなるよう、Blueshipに対し機能や操作性改善の要望を出して、ServiceNowのUIや機能をカスタマイズしています。また業務効率化の視点では、RPAによる自動化のほか、一連の業務プロセスを可視化したうえで組み直して最適化を図るBPRも進めています。藤沢市の場合、デジタル市役所構想の実現に向けた第一歩として、コンタクトセンター導入によるタッチポイントの一元化があり、その先に施設予約や手続き・申請のオンライン化などが続く計画です。各自治体が描く絵に沿って、業務を整理した上で最適なワークフローを設計することが求められますが、ServiceNowによる住民接点のプラットフォーム構築や、FAQの充実など地道な取り組みが功を奏し、エスカレーション数が約25%、入電数も約15%減るなど、目覚ましい成果を上げています。今後は生成AIのサービス開発も進め、実証実験などの取組みを深めて行きたいと考えております。
藤沢モデルのワークフロー
自治体BPOは大きなポテンシャルを秘めている一方、現在のポジション・アプローチでは限界があり、政策立案など上流にかかわれるポジションを目指し、ビジョンを描いて継続的・段階的にアプローチする藤沢モデルのような取り組みを積み上げていく必要がある。その先に、"誰ひとり取り残さない人に優しいデジタル社会"の実現に貢献するベルシステム24が見られるかもしれない。
社員一人ひとりが「その声に、どうこたえるか。」を胸に、課題に挑むプロジェクトストーリー
行政サービスのデジタル化に伴走し、誰一人取り残さない社会の実現を目指す「自治体DXプロジェクト」
コロナ禍や不確実な国際情勢を受け、国内企業の多くが会社のあり方を見直すなか、自社だけでなくパートナーのリソースも活用してより強固で柔軟な体制づくりを加速しようとする企業が増えています。活性化するBPO市場において、中期経営計画で「NEW BPO」を掲げ事業の多角化を進めるベルシステム24では、資本提携や業務提携などアライアンスを積極的に進めています。その狙いやここまでの成果、今後のビジョンについて聞きました。
対応する人によらない再現性を担保する……コンタクトセンター運営のリーディングカンパニーとして長年磨き上げてきたのが業務の「型化」です。ベルシステム24のDNAとも言える型化のメソッドは、それ自体が価値となる大きな可能性を秘めていました。型化メソッドをどうサービスへと展開し、価値につなげるのか、先頭に立って取り組みを進める2人のインタビューをお届けします。
AIが登場して以降、淘汰される業種のひとつとされてきたコンタクトセンターだが、生成AI元年と言われる2023年を迎えた今、市場規模に大きな変化は見られない。一方で、生成AIの主要ベンダーは、学習データとしてコンタクトセンターに蓄積される膨大な対話データ(VoC)に注目しており、コンタクトセンターがキープレイヤーとなる可能性も出てきた。生成AIを脅威と見做すか、イノベーションをもたらす強力な武器と考えるか、ベルシステム24の答えとは?
コンタクトセンター受託を主力とし、グローバルで4万人超の従業員を抱えるベルシステム24。データドリブンでセンター業務を変革し総合BPOパートナーを目指す同社の取り組みについて、現状や見えてきた未来、顧客に提供し得る新しい価値など、DXを牽引する3人が語ります。
社会の急速な変化を受け、日々変わっていくクライアントのニーズにどう対応するか ――― ベルシステム24が出した答えは、営業とオペレーションが分離していた“製販分離組織”を“製販一体組織”に変え、各クライアントの責任者を「アカウントオーナー」とする制度でした。アカウントオーナーが目指す理想とあわせ、実際のクライアントとの関わり方、さらに制度にあわせた人材育成まで詳しく聞きました。
定型業務でも属人化が進み、業務改革や人材の流動化が進まない傾向にある経理・人事領域。コンタクトセンター以外の事業で多角化を図るベルシステム24は、経理・人事領域を得意とする株式会社レイヤーズ・コンサルティング(以下、レイヤーズ)と資本提携。2022年3月にHorizon Oneを設立し、経理・人事BPO市場に参入しました。Horizon One設立の経緯や目的、ここまでの取り組みの成果や今後のビジョンなどについて聞きました。
これまでのカスタマーサポート型コンタクトセンター市場の成熟化を背景に、VOCセントリックのデータマーケティング事業で、コンタクトセンターからマーケティングセンターへの進化を遂げるベルシステム24。既に専門企業がひしめく市場で勝算はあるのか?"蕎麦屋のカレー"が意図するデータマーケティングの形とは?
2023年9月に養豚経営支援システム「Porker」を手がける株式会社Eco-Porkと資本業務提携、さらに2024年4月にはNTTテクノクロス株式会社との共同サービスとして牛の起立困難予防声かけAIサービス「BUJIDAS(ブジダス)」を提供開始し、一次産業への取り組みを推進するベルシステム24。既存のBPO業務で培ったノウハウは業界が抱える課題を解決へと導く起爆剤になる……その背景にある熱い想いについてプロジェクトを率いる2名に話を聞きました。