Vision コンタクトセンター業務で培ったデータドリブンの手法をBPOビジネスに拡張
"音声DX"によるコンタクトセンターの高度化が可能に
主力とするCRMビジネスでデータドリブンを加速する背景や状況など教えてください
まず外部要因としては、この10年くらいで、コンタクトセンター業務のなかで蓄積される様々な情報・データを、属人的な作業を介することなく活用できる、新たな技術や仕組みが整ったことが大きいと思います。その結果コンタクトセンターの現場では、記録・登録など後工程の作業がなくなり生産性が劇的に向上する、属人化によるバイアスを解消して対応スキルが平準化する、業務負担が減り働きやすくなったことで採用しやすくなり早期退職が減るなどの好影響が見られます。生産性の向上は同じ時間での対応可能件数増につながり、コスト最適化という形でクライアントにも大きなメリットをもたらします。このほかクライアントのメリットとして、対応品質のレベルアップにより解決率が向上する、リアルタイムでデータ活用できるようになるなども見逃せません。
内部要因としては、かつて外資系ファンドの傘下に入った際、すべてデータで可視化するグローバルスタンダードのコンタクトセンター運用を戦略的に実践したこと、さらに、エンドユーザーと直接対峙する従業員の多くがVOC活用の必要性や重要性を理解している、CRMビジネスならではの下地もあったと思います。
社内のデジタル人材を育成・強化しつつ、3つの組織でデータドリブンを推進
データドリブンを推進するための人材や組織については、どのように強化していったのでしようか
データドリブン推進のエンジンとなる3つの組織を設けました。1つ目は、国内約3万人、グローバルで4万人を超える従業員の中からデジタル人材を発掘して作った「デジタルDX戦略部」です。社内公募で手を挙げた100人超から20数名を厳選して、異動をともなわず本業に従事したまま兼業するバーチャル組織として2024年1月に発足しました。
2つ目は、コンタクトセンターの基盤システムであるクラウド型PBX、音声認識システムやCRMシステム、ボイス・チャットボット等のコンタクトセンター向け製品のほか、データ分析やコンサルティングなどのサービスを外販する「デジタルCX本部」です。先端ソリューションを幅広く取り扱うため、各分野において専門知識を有する社外のプロフェッショナル人材を積極採用し、現時点での規模は約90名となっています。最後3つ目が「データマーケティング事業部」で、ベンチャー企業と戦略的提携のうえデジタルマーケティングに取り組んでいます。

株式会社ベルシステム24 常務執行役員 CHRO 人事・総務管掌 呉 岳彦
専門チームの支援で現場にデータドリブンが浸透、マッチングAIで離職率が低下
ここまでのデータドリブンの取り組みで成功事例はありますか
一定の成果が見えてきた取り組み事例として2つほど紹介させてください。1つは5年ほど前にスタートし、2024年3月から全社組織に昇格したAdvanced Operation Lab.です。少数精鋭16名のメンバーが、北海道の拠点からリモートで全国各地の主要なオペレーションチームと連携し、新しいテクノロジーや統計分析を駆使したオペレーション業務改善を支援しています。
もう1つが、DUMSCOというベンチャーとの協業で開発・導入した「採用マッチングAI」です。コンタクトセンターはもともと労働力の流動性が高い業種ということもあり、ベルシステム24でも毎年7,000~8,000人を採用しています。募集~採用面接~オペレーション現場が面談~クライアントと検討して採用~現場でOJTといった一連のプロセスには膨大な工数とコストがかかりますが、離職率が高く常に募集し続けなければならない状況でした。
そこで、優秀な人材かどうかではなく、コンタクトセンター業務に合っているか(言い換えれば、長く働いてくれそうか)どうかを判定するマッチングシステムを開発しました。過去10万人くらいのデータをAIで分析し、コンタクトセンターを6つに分類したうえで、マッチングAIによる選考採用を進めた結果、半年後に残っているケースが大幅に増えました。マッチングAI導入と併せ、必要性が低下した面談や現場での研修を廃止した結果、十億単位のコスト削減を実現しました。
生成AIの活用により、コア業務に集中できる現場へ
生成AIが話題ですが、コンタクトセンターへの影響はありそうですか
コンタクトセンター業務に最もインパクトがあるのは、要約の自動作成です。会話内容をキーボード入力する従来の後工程が不要になり、現場の生産性が飛躍的に向上します。生成AIの登場によって複雑なツールの操作が不要になり、人材要件がよりコミュニケーションに長けた人にシフトする可能性があります。シニア人材の採用が増えて、コンタクトセンターの風景が今とは随分変わってくるかもしれないですね。
データドリブンによる課題解決のノウハウをBPOビジネスに拡張
最後に、データドリブンの取り組みについて今後のビジョンをお聞かせください
顧客ニーズも高度化し、単に顧客のデータ活用を支援するだけでなく、データを活用したマーケティング施策で売上拡大につなげるなど、より直接的な成果を求めるようになってくると思います。蓄積したデータドリブンのノウハウをもとに、徹底的に可視化して合理的に運用する手法をBPOサービスとして展開し、顧客のDXを支援していく計画です。