Vision 自治体BPOで"誰ひとり取り残さない、人に優しいデジタル社会"を支える
デジタル田園都市国家構想を機に自治体DXを支援するBPO事業を強化
自治体BPOを強化する背景について教えてください
自治体で民間委託が可能になって以降、民間向けコンタクトセンタービジネスの知見を活かし、自治体で実績を積んできました。その後2020年前後から、国主導でマイナンバーをフックとした自治体DXが動き始め、"デジタル田園都市国家構想"の実現に向けて年間1000億円規模の交付金が予算化されたことを受け、民間で磨いてきた知見を活かし、改めて公共領域のBPOを深耕していくことにしました。
当然この市場を狙っている競合は多く、人材派遣大手や地場の中小SIerが入り乱れ価格競争が激化しています。厳しい市場で差異化を図るうえで、1つ可能性を見い出しているのが藤沢市の事例(以下、藤沢モデル)です。単なるコンタクトセンターBPOの提案ではなく、まずはコンタクトセンターを軸に住民との接点を整理したうえで情報を集約(システム化)。縦割りでバラバラの業務をワークフローで回すという将来を見据えた先進的な提案で、その第一歩として総合コンタクトセンターを導入しました。
社内的には、当社が強化してきたアライアンス戦略が効果を発揮しています。まずステークホルダーであるTOPPAN株式会社(以下、TOPPAN)のネットワークが加わったことで、営業の可能性が拡がりました。もう1つが、自治体向けに幅広い支援サービスを展開するBlueshipとの協業です。自治体DXではデジタル化による業務効率化が必須となりますが、BlueshipがServiceNow(グローバルで利用されているワークフロー管理システム)で仕組みを構築し、オペレーションを我々が担うスキームで営業を進めています。
運用力を強みに催告業務から窓口業務・事務系業務へと領域を拡大
自治体向け事業のこれまでについて紹介いただけますか
当初受託したのが代表電話の代表電話取次業務や個人住民税や国民健康保険料の未納に対する催告業務です。その後、コンタクトセンターに近い窓口業務やその裏の事務系業務などを取り込んでいきましたが、その過程で吸収・蓄積できた、国民健康保険や年金など民間では得られない自治体業務に関する知見は、軽自動車等の登録・廃車手続き対応など、大手派遣会社とバッティングしない業務に領域を拡げていくうえで貴重な資産となりました。窓口業務や事務系業務は杉並区や中野区などで実績を積んでおり、杉並区では国保年金課に当社スタッフが100名規模で勤務し、かつて職員が担っていた業務の7割程度をアウトソースで賄っています。
その後、コロナ禍の収束段階でマイナンバーと連動するデジタル田園都市国家構想が動きはじめ、自治体DXに向けた現在のBPOに至りますが、我々は、各自治体でDXの絵を描くデジタル専任官への営業を展開し、府中市などで実績を作ることに成功しました。
ベルシステム24の強みは現場目線での運用構築力だと思います。デジタル専任官の構想をもとにSIerが設計したシステムは実態に合わないケースも多くあります。実際、現場と上層部の間で板挟みになりがちな課長クラスから、実務を熟知する我々へのサポートニーズを強く感じています。

株式会社ベルシステム24 執行役員 CX第3事業本部長 吉田 豊
ServiceNow+オペレーションで営業推進、サービス開発にも取り組む
Blueshipとのパートナーシップの狙いや成果を教えてください
狙いは、自治体BPOの提案で欠かせないデジタル領域を強化することにあります。相互補完でそれぞれの得意分野を活かし提案力を強化できるパートナーを開拓しようと50社近くをネットワークするなかで紹介されたのがBlueshipでした。
良い意味でSIerらしくないというか、ボトム(現場)をしっかり見てServiceNowの機能で自治体の課題を解決していくアプローチはベルシステム24のカルチャーに近く相性が良いのではと思いました。実際にBlueshipと連携する形で、世田谷区の出産・子育て応援事業業務委託を皮切りに、東京都庁や藤沢市などで実績を積み上げてきています。対応キャパシティも考えて、それぞれ接点のある自治体リストについて両社で協議し、勝ち筋を厳選して共同で営業を仕掛けており、相互に補完しあう理想的なジョイントベンチャーになっています。
Blueshipとの協業ではサービス開発にも取り組んでいます。まずは、ServiceNow を導入して来庁せずにオンラインで完結できるシームレスな住民サービスを実現したうえで、次のステージでは、裏側の業務をワークフローでデジタル化し、職員の工数を大きく削減することを目指しています。一連の過程では必ず業務プロセスの再編・変更を伴うことになり、当社が長年蓄積してきたBPR(業務再構築)の知見が活かせると考えています。さらにServiceNowに組み込むワークフローの設計まで当社で担えるよう、スキル習得や専門人材の育成を急いでいるところです。