Vision 人的資本✕AIで知的資本を創出し、社会の豊かさを支えたい
イノベーションのジレンマを乗り越え、"AIとの共創"でブレイクスルーを目指す
ベルシステム24が「AIとの共創」を目指す意義とは何ですか
生成AIが登場する前から、コンタクトセンター業界はAIに乗っ取られると言われてきましたが、実際にはそのようにはなってはいません。AIはある領域ですでに人間を超えている一方で、まだ人間の方が優れている領域も多く、 敵(脅威)と捉えるか味方(武器)と捉えるかは我々次第です。知性を生み出す主体が、人間だけから、生成AIへと拡張していくなか、AIを恐れるのではなく、むしろ強力な武器として積極活用してAIとの共創・協調を模索するべきです。当社は"イノベーションとコミュニケーションで社会の豊かさを支える"をパーパスとして掲げていますが、より効果的にこの理念を実現できるのであれば、人間が主役であることにこだわらず、生成AIの効果・成果を最大化するために人間がサポート役に回る、主従逆転のアプローチもありだと思います。
生成AIの登場によって、今まさに当社は"イノベーションのジレンマ"に直面しているわけですが、先程のパーパス実現に向けた5つの重要課題(人材と働き方の多様性、人材のパフォーマンス向上、リスクマネジメントの高度化、ビジネスモデルの変革、地域社会への参画)を達成するには、ジレンマを乗り越えてピンチをチャンスに変える必要があります。
特に人材のパフォーマンスや多様性において、AIがブレイクスルーをもたらす可能性があると考えており、当社としても注目しています。
3つの生成AI活用プロジェクトが同時進行中
進行中の生成AI活用プロジェクトについて教えてください
現在、3つのアプローチで生成AI活用を進めています。1つ目は、リサーチ部門内に設けた「先端テクノロジー研究グループ(以下、先端研)」による、コンタクトセンターの現場における"持続的なイノベーション"の取り組みです。先端技術を活用したアプリケーションを開発し、オペレーションの現場に投入することで、業務変革による生産性向上を目指す内部向けプロジェクトになります。
2つ目は、生成AIを活用したソリューションを外販する組織が運営する「生成AI Co-Creation Lab.(以下、Co-Creation Lab.)」です。大規模な生成AIモデルを提供するGoogle、Microsoft、AWSといったビッグテックとアライアンスを組み、クライアント企業も巻き込んで3者の協働により、生成AIのユースケースを共創する外部向けプロジェクトです。2~3年のスパンでクライアントの成果期待に応え収益を上げるビジネスモデルを目指しています。
3つ目が、株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所(以下、ソニーCSL)との共同研究プロジェクト「イノベーション&コミュニケーションサイエンスラボ(以下、ICS Lab.)」です。こちらは、我々の業態を駆逐してしまうような技術を他社に先駆け創り出し、コンタクトセンターの新しいモデルを打ち立てる"破壊的イノベーション"を目指しています。(2020年4月~2025年2月までの活動)
短期間で成果を積み上げて継続する先端研、ユースケース共創を事業化するCo-Creation Lab.、生成AIの視点でコンタクトセンターを再構築するICS Lab.、登山に例えれば3つのルートで登頂を目指す戦略です。

株式会社ベルシステム24 常務執行役員 CSO/CCO/CPO/CISO/CRO 景山 紳介
プロフェッショナルサービスを提供するBPOカンパニーへ
これまでの取り組みにおける成果事例や社内外の評価について教えてください
本社の社員には、業務ツールに生成AIサービスを組み込んで提供しており、アイデア出しなどで活用しています。また、ICS Lab.では4万人近いコミュニケーター向けのツールも開発中で、生産性向上に向けて生成AIの社内活用を加速していきます。もう1つ成果事例として紹介したいのが、スキル不足などでこれまでコミュニケーター採用に至らなかった人材を対象に、足りないスキルを補う研修を行うことで採用につなげるプレ・トレーニングセンター「SUDAchi」の取り組みです。生成AIを活用した顧客電話対応のロールプレイングツール(Webアプリ)を開発し、自宅で好きな時にロールプレイング研修ができるようにしました。「SUDAchi」自体、インクルーシブなアプローチでコミュニケーター採用の間口を拡げる取り組みですが、より柔軟に、そして気軽にスキルアップできるようになったと思います。
当社に対する社外の評価や認識も大きく変わりました。サステナブル経営に関する評価会社の格付けで適用される当社のインダストリー区分が、これまでのカスタマーサービスからプロフェッショナルサービスに変わりました。ブランディングの効果もあるとは思いますが、AI活用を含む新たな取り組みによって、単なるコンタクトセンターの会社ではなく、コンサルティング能力を有するBPOカンパニーとして認識されつつあるようです。
AIとの共創を推し進め、知的資本の創出を加速し社会に貢献したい
総合BPO企業として、今後どのように"AIとの共創"を進めていく計画ですか
慢性的に人材確保に苦労しているコンタクトセンターですが、今後の人口減少を考えるとその傾向はさらに強まると思います。生成AIなど新しい技術の助けを借りて、1人が2人分、3人分の仕事ができるようになれば、人材難にも対処できるようになります。コミュニケーターの負担が軽減し、より働きやすくやりがいのある環境を実現して、応募を増やす可能性すらあります。先進的な取り組みに魅力を感じ入社を決めた求職者も出てきており、そのような社員が今後増えてくるでしょう。先端技術を積極的に取り込みつつ、人間は人間にしかできないことに集中する"真のデジタルBPO"を目指したいと思います。