「心を重ねる」 谷川俊太郎
産声を上げたその瞬間から、 人は声を持っています。 その声はやがて相手に向けられ言葉となって、 人と人を結びます。
会ったこともなく顔を見たこともない人の 声が呼んでいます。
耳もとで聞くその声は、 時に口ごもり、 時に苛立ち、 隠れた不安を、 抑えた怒りを、 無言の感謝を秘めています。
私たちはあなたの声を待っています。 人の心を自分の心に重ねて、 あなたの声に答えます。
人は独りではないと信じているから、 コールセンターは日夜を分かたず動き続けます。
耳だけではなく全身であなたの声を、 あなたの言葉を受け止めます。
世界にひろがる声の網の、 見えない網目の一つとして。
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1952年第一詩集『二十億光年の孤独』を刊行。1962年「月火水木金土日の歌」で第四回日本レコード大賞作詩賞、1975年『マザー・グースのうた』で日本翻訳文化賞、1982年『日々の地図』で第三十四回読売文学賞、1993年『世間知ラズ』で第一回萩原朔太郎賞など受賞・著書多数。
詩作のほか、絵本、エッセイ、翻訳、脚本、作詞など幅広く作品を発表している。
日夜、寄り添う皆さんの声が心を重ねあう力となっている姿を実際に拝見して企画しました。
グラフィックでは、その声がまるで一粒の水滴のように、反射し、輝きを持って連鎖していく。そして、その光の存在が波紋となって広がるビジュアルを制作させていただきました。
写真家の瀧本幹也さんと共に本物の水滴を見えない線に浮かび上がらせ、水を張って合成せずに撮影した奇跡の一枚です。
この輝きや広がる彩りは、コールセンターで働く全ての方の心にも重なるあたたかな体温が描けたと思っております。
これらのクリエイティブが少しでも皆さんの誇りとなり、未来へ背中をおし、互いに結び合う存在となれることを願っております。
武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科を経て博報堂入社。
2007年株式会社goen°を設立。
広告の企画、演出、商品開発、本の装丁、映画・舞台の美術や、動物園や保育園の空間ディレクション、青森新空港のステンドグラス壁画を手掛けるなど、活動は多岐にわたる。
現在、一児の母としてますます精力的に活動の幅を広げている。N.Y.ADC賞、ONE SHOW、朝日広告賞など受賞多数。
どんな抽象的な言葉にも、一人の人間の具体的な生身がひそんでいます。
言葉は時に文字よりも先に、声で一人を一人に結ぶと私は信じています。
AIの声、AIの言葉も元を正せば人間のいのちから生まれたのです。